- 022 日々これ精進 -



まだこの世界になれていない頃。
初めて降り立った国、Dreaming Forest からもまだほとんど出たことが無い頃から。
日課のように続けていることがある。

「あ、ナッツ!」

今日も道端で見つけたNutsを、私は嬉々として拾った。
手の中でコロコロと転がして感触を楽しみ。
またぼちぼちと歩き始めた先で、次のNutsを拾う。

ゆっくりと両手の中に2個のナッツを握りこむ。
スゥっと息を吸い込み、その手の中に魔力を集中させてゆく。

「 Create 」

小さく呟くと手の中のNutsが僅かに熱を帯びる。
2つのNutsは手の中で溶け合い、その姿を変え… Milk Nuts になった。

最初の頃は消えてしまうことが多かった。
たまに何か出来ても、何だかわからない代物になってしまうことがほとんど。
それでも。お茶やお菓子はこうやって作ることも出来るんだよと教わってから、
それは私の日課になっていた。

初めてMilkNutsが作れるようになった時は嬉しかった。
Teaが作れるようになったときには、これでお茶会が出来るとはしゃいだ。
Broccoriが作れるようになったときには、マヨネーズは無いのかと人に聞いて歩いた。
Wineが作れるようになったときには、知り合いに届け歩いた。

新しいものが作れるようになるたび、私は喜びでいっぱいになる。

ある程度の物が作れるようになってからは、それを今は師匠となってくれたSeeleさんの所に
良くお供えに届けたものだ。
寝ていることが多い師匠の前に、出来上がったものを持っていくのは楽しみだった。
だって、どうせなら誰かにも食べてもらいたかったから。
師匠は起きているとにこにことそれを受け取ってくれ、美味しいといってくれた。
それは、私の励みだった。

今ではほとんどこの作業を失敗することは無くなった。
丁度よい食材でも手に入れば、薔薇の花やフレンチトーストといったよりお茶会向きの物さえ
作れるようになった。

それでも、まだ極めきってはいない。
お散歩の時に取る猫の姿で、ちっちゃな手にNutsを乗せて呟く。

「 Create 」

もっともこの姿の時はMilkを作って自分で飲むことの方が多いのだが。

忙しくなって、大好きなこの世界に来れる時間が少なくなっても。
ほぼ必ずやっているこの修行。
いつかはその道を極めるために。

「 Create 」

今日も私は呟く。
あの日の嬉しさを忘れないために。





     〜Meru〜



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