ねぇ、知ってるのかな。
こうして君がそこにいることが。
私にとってどれだけ嬉しいか。

でもそんな君を。
ちょっとだけ疑ってたんだって。

…君は知っているのかな?


何が起こったのか、最初は本当にわかんなかった。
だって人狼なんてお婆ちゃんのお話の中に出てくるもんだよ?
そんなの、いるわけがないって。
そう思ってたの。

それがさ。
何だか皆真剣に話し合っちゃって、正直話についていけなかった。
でもただ一つ。
喋らないことは疑惑の種にしかならないことくらいは分かった。
だから必死に喋ってた。

信じて良かったのはシスターとナオミさんだけで。
でもシスターとナオミさんから見れば、私もまた人狼かもしれなくて。
怖かった。
どうしたらいいのって叫びたかった。
ウチに帰っても父さんにすら何も言えなくて。
本当に辛かった。


あの日、どこで寝ようって迷ってる君に声を掛けたのは。
一人でいるのが怖くなったからだったんだよ。
君のことだって疑っていなかったわけじゃないけれど。
それ以上に一人でいるのは嫌だった。
困っている時はお互い様っていうのもあったけどさ。

だから。
本当は色々考えると君だって信じきれないんだけれど。
今も少し疑っているんだけれど。
それでも。

一緒に居たかったんだ。

誰かが傍に居てくれてあんなに嬉しかったことってない。
何よりも。
今、君がここに居てくれることが…

『ごめんね』

うぅん、謝らなくていいよ。
私は間違いなく君に助けてもらったんだから。

『絶対に忘れないから』

うん、私も忘れない。
私の生はここで終わってしまうけれど。
空に行っても忘れないから。



「 …… 寝ているならそのままやった方がいいか …… 」

響いた低い声に薄く目を開けて見た。
背の高い影の向こう、唇を噛み締めている彼の姿を。

『 あ り が と う 』

声無き声でそう告げる。
そして。


―― カトリーヌは迫り来る闇に身を任せた。






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